深海の生物はなぜ体が巨大なのか

生物

はじめに

深海に生息する生物は、その他の近縁の生物よりも体が巨大である傾向があります。このことは「深海巨大症」と言われており、ダイオウイカ、タカアシガニ、ダイオウグソクムシ、リュウグウノツカイなどが挙げられます。

イカを例とすると、深海に生息するダイオウイカは最大で全長14m、重さは20kgにもなります。一方で、私たちがよく口にするスルメイカ、コウイカ等は全長30cm、重さは5~8kg程度です。日本近海の最小のイカであるヒメイカは全長2cm程度で、アマモの生い茂っている浅瀬や藻場に生息しています。

カニを例とすると、深海に生息するタカアシガニは最大で甲羅の横幅が40cm、全長が4mにもなります。一方で、ズワイガニは甲羅の横幅が10~15cm程度、毛ガニは8~10cm程度です。岩場や防波堤にいる一般的なカニであるイソガニは2~4cm程度です。

ベルクマンの法則

このように生息する水深が深くなるにつれて体が巨大になるのは、ベルクマンの法則と同じ理由であるということが提案されています。

ベルクマンの法則:恒温動物においては、同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が大きく、近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する。

深海で体が巨大になる要因としては、すべてが明らかになっているわけではありませんが、

①高い水圧に耐えるため
②体に熱を蓄えるため
③代謝エネルギーを抑えるため

といったものが考えられています。このように深海の生物は過酷な環境に堪えるために進化して巨大化していったという説が現在の主流となっています。

しかし、私は逆の仮説を立ててみました。深海の生物が進化して巨大化していったのではなく、陸上や浅い海に生息する生物が進化して小型化していったというものです。

環境要因からの考察

陸上や浅い海には太陽光が降りそそいでおり、酸素もあり、気候変動による影響も大きく受けます。同種間・異種間での食物連鎖も激しく、変化が起きやすい環境です。そのような変化に対応するために、生物の突然変異や進化が起こりやすいと言えます。

一方で、深海には太陽光が届かず暗闇で、酸素濃度も低く、気候変動による影響をほとんど受けることがありません。常に水温が2~4度で安定しており、変化が起きにくい環境です。そのため、生物も進化しなくとも生きていくことができます。

遺伝子の観点からの考察

生物の体は水分、タンパク質、脂質、糖質等で組成されています。体が大きくなればなるほど、こういった体を組成する材料は多く必要となります。また、大きな体に成長するための時間、体が成熟して生殖できるようになるまでの時間も長く掛かります。

そこで、生物は遺伝子の保存のために有利な戦略として体を小さく進化させていったのではないかと考えました。体が小さくなればなるほど、体を組成する材料も少なくて済むようになるからです。
さらに、体が小さいほうが外敵から身を隠しやすく、食べられにくくなります。また、卵を100個産むよりも10000個産む方が遺伝子プールを広げていくためにも有利だったため、早く成熟して多くの卵を産むように、小さく進化していった生物が多かったのではないかと考えます。

陸上や浅い海に生息する生物はこのようにして小さく進化していきました。一方で、深海に生息する生物はそもそも外的な変化が少ない環境で進化する必要性がなかったため、太古の巨大な体のまま生き続けているのではないでしょうか。

まとめ

以上より、陸上や浅い海に生息する生物は、激しい環境の変化や食物連鎖に対応していくために体を小さく進化させていったと考えます。

その一方で、深海に生息する生物は、環境の変化が少ないため、太古の巨大な体のまま生き続けていると考えます。

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