新たな処理方法
使用済み核燃料の処理方法として、ウランを自然界にもともと存在するレベルまで希釈し、ウランの採掘地へ戻すことにより、人間に対しても、自然界に対しても悪影響を及ぼさないものと考え提言いたします。
ウランの核燃料化の流れ
原子力発電においては、ウランはそのまま燃料として使用することが出来るわけではありません。採掘されたウラン鉱石は、様々な化学的処理を経て核燃料となりますが、その過程において濃縮されることにより、大量のエネルギーを引き出すことが可能となります。
原子力発電では、原子炉という装置の中で濃縮された核燃料を核分裂させます。ウランが核分裂すると熱が発生するので、この熱エネルギーを利用して水を蒸気に変え、蒸気によってタービンを回すことにより電気をつくります。このようにして燃料としては使うことのできなくなった核燃料が使用済み核燃料となります。
使用済み核燃料は空気中ではそのまま核分裂が進み高温になってしまうため、現状、原子力発電所内の冷却プールにて保管されています。
スウェーデンとフィンランドでは、地層処理といって、使用済み核燃料をガラスや粘土などで固め、300メートル以上の地下に埋めて処理をしています。
ウランの自然性
ウランは地球上のあらゆるところに広く分布しており、私たちの身の回りにある土砂や海水にも含まれています。自然界にもごく身近に放射線は存在しているのです。
ウランは地球誕生の際に取り込まれたものであり、その長い歴史とともに少しずつ崩壊し、総量を減らしています。
ウラン鉱山は日本には現在は存在しませんが、岡山県と鳥取県の県境の峠にはウラン鉱石がある程度存在するほど、地球上には多く存在しています。海外のウラン鉱山も、露天掘りにより採掘されるものが多く、100メートルほどしか掘っていない鉱山が多く存在します。
地球内部の核分裂について
実は、地球内部でも原子力発電と同じ原理でエネルギーが生み出されています。
地球内部の内核は、5000~6000度の高温になるといわれています。この熱の大半は、放射性元素が崩壊するときに生まれる熱エネルギーに由来しています。
地球内部の熱が地表に上昇してくると、地熱エネルギーとして温泉や地殻変動の元となります。これは、地球上の生物にとって欠かせないエネルギーです。その重要性は、この熱源が無くなったとき生物は滅亡すると言われるほどです。
そして、地球内部において発生しているエネルギーは、原子力発電が日本においても行われていた時分において、原子力発電によって得られていたエネルギーの40~80倍程度であると考えられています。
使用済み核燃料に含まれるウランについて
以上のことから、原子力発電において、自然界の鉱石から濃縮されたウラン燃料は、核分裂することによって、熱エネルギーと使用済み核燃料となることがわかります。
ウランが崩壊することにより熱エネルギーが生み出されるため、残った使用済み核燃料は元々のウラン燃料よりもウランの濃度は低くなっています。つまり自然界から採掘してきた鉱石が含むウランの総量よりも、使用済み核燃料が含むウランの総量は少ないということです。
使用済み核燃料の新たな処理方法について
現在、使用済み核燃料は、核分裂が進み高温になるのを防ぐため、原子力発電所内の冷却プールという一箇所にまとめて大量に保管されています。福島第一原子力発電所でメルトダウンが起きたのもこの使用済み核燃料が原因でした。つまり、先の大規模な避難を要する事態が発生した要因は、核燃料が濃縮された状態のまま放置されたことにあるのです。
ここで最も問題なのは、使用済み核燃料が原子力発電所にまとめて保管されているという点だと考えています。
ウランは自然界のあらゆるところに広く分布しているものなので、つまり、ごく微量であれば地球上の生物にとって問題とはらないのです。そこで、使用済み核燃料も自然界に元々存在するレベルまで細かくして、ウランを採掘してきた場所に戻してしまえば、周囲に悪影響を与えることなく処理することが可能だと考えています。このとき元々あった土地に戻すウランは、核分裂によって一部は崩壊済みなので、採掘してきたときよりも総量は少なくなっており、結果としてはその土地にあるウランの総量は減少していることになります。
おわりに
例えば、火薬工場で、廃棄予定の火薬を工場の敷地内にまとめて保管していたら、万が一の事故で爆発が起きたときに、廃棄予定の火薬も爆発してしまい、より被害が大きくなってしまいます。そこで、廃棄予定の火薬は他の爆発物や可燃物とは離れた場所に保管し、最終的には爆発しないように分解して処分するのが望ましいでしょう。実際に、火薬類取締法及び火薬類取締法施行規則は、火薬類の停滞量(保管許容量)及び保安距離の規定を設け、大量の爆発物が一箇所に留まることの無いよう規制されています。
同じように、使用済み核燃料もまとめて長期間保管することで危険性が高くなってしまいます。原子力発電所とは離れた場所で細かく分解してしまい、元々あった自然界に戻してしまえば、事故も防ぐことができ、自然へのさらなる悪影響もありません。